ファッシアは元々、シーツのような薄い膜を意味しています。
これまでの認識では、筋肉を包む膜(深筋層)を筋膜とよび浅層と深層があると考えられていましたが、現在では浅筋膜は筋肉ではなく皮下組織(=皮下脂肪)を包むものということがわかってきました。
浅筋膜は皮膚と筋の間のスライドを援け外力に対して筋肉を保護します。結合がゆるむと皮膚に加わる衝撃を逃すことができず筋肉へダメージを与えやすくなります。さらに、網目状に互いに絡み合いネットワークを形成しているので、どこか1箇所が引っ張られることで、全体的な緊張やバランスの乱れに繋がることも少なくありません。
深筋膜は筋肉自体を被うスジ状の白い膜で、個々の筋~筋群を覆って内外から支えます。固定、収縮の制限、他筋との摩擦軽減作用があります。正常時には筋膜間は組織液に満たされ潤 滑油の役割を果たし筋と筋の摩擦を軽減しています。筋同士の摩擦が弱すぎると、Fuzz(絨毛)が癒着しやすくなります。筋膜には無数の神経細胞(受容器や自由神経終末)が分布しているので痛みに敏感です。
筋膜と筋膜が癒着した状態を、 Fuzz(=直訳で綿毛)と呼び、起床時など背伸びをするのは、胸 の側面から肩にかけての筋膜癒着を取り除き、隣接する組織がスムーズにスライドするように無意 識に行っている動作です。
こりによる痛みや不調が出るメカニズムとしては、次のような変化が起こっている可能性があります。
癒着が生じたばかりであれば、伸びや簡単なストレッチ、運動などで筋膜間の滑りを回復することが出来ます。しかし、何週間、何ヶ月、何年、あるいは何十年もかけて積み重ねられた筋膜癒着は、自然治癒は困難です。その場合、筋膜間をメスで剥離する訳にもいかなので、ドクターであれば食 塩水や局麻剤を癒着部に注入して剥離、針灸師であれば、ファッシア内に針先を入れ、運動針を行うことで癒着を剥がすなどの治療、ケアが行われます。肉離れや骨折などの後遺症として生じる受傷部位の違和感もファッシアが原因となっている場合も少なくありません。
腰方形筋は、腰部の筋肉で、脊柱の安定化や側屈の動作に関与しています。この筋肉は、特に長時間の座位や立位、重いものを持ち上げる動作などで過度に使用されると、緊張や痛みを引き起こすことがあります。
今回は腰方形筋の深部の筋膜リリースを行い、緊張や筋膜の癒着を解消する方法になります。
広背筋と大円筋は、上肢と胸郭・脊柱とを結ぶ筋肉で、特に上肢の内転、外転、回旋などの動作に関与しています。これらの筋肉が過度に緊張すると、肩こりや肩の動きの制限を引き起こすことがあります。
今回は広背筋、大円筋の浅部の筋膜リリースを行い、緊張や筋膜の癒着を解消する方法になります。
受傷後の炎症5徴候(腫脹、疼痛、機能障害、発熱、発赤)は消失し、違和感のみ残っており、患側深筋層の肥厚癒着がエコー下にて確認できます。