逆子(骨盤位)の改善に鍼灸が選ばれる理由

1. 逆子(骨盤位)とは?
通常、出産が近づくと赤ちゃんは
**「頭が下・足が上」の向き(頭位〔とうい〕)**になります。
これに対して、
・おしりが下を向いている
・足が下を向いている
といったように、頭以外が下を向いている状態を「逆子(骨盤位〔こつばんい〕)」と呼びます。
妊娠中期から後期のはじめ頃までは、
赤ちゃんはまだ小さく、羊水も多いため、
お腹の中でよくクルクルと向きを変えます。
そのため、妊娠30週くらいまでは、逆子であっても自然に頭位へ戻ることがよくあります。
一方で、妊娠35〜36週くらいになると、赤ちゃんの大きさも増え、向きが変わりにくくなってきます。
2.東洋医学(鍼灸)から見た「逆子になりやすい状態」
東洋医学の見方も、逆子の改善方法を考えるうえで参考になります。
鍼灸では、逆子の背景として次のような状態が重視されます。
・下半身の「冷え」
→ お腹や骨盤まわりの血流が悪くなり、子宮周囲の筋肉がかたくなりやすい
・血(けつ)のめぐりの悪さ
→ むくみ・肩こり・冷えなどが出やすい体質
・エネルギー不足や強い疲労・ストレス
→ からだ全体のバランスが崩れ、子宮本来の柔らかさが失われる
そのため、鍼灸で逆子をケアするときは、
お腹と下半身の血流を良くし、子宮の緊張をゆるめて、赤ちゃんが自分の力で回りやすい環境を整えることを、大きな目的としています。
3. 逆子に対する鍼灸治療とは?
逆子の鍼灸治療で、特によく知られているツボは次の2つです。
● 至陰(しいん)
足の小指の爪の外側のきわにあるツボです。
逆子のお灸といえば、まずここが挙げられるほど有名です。
● 三陰交(さんいんこう)
内くるぶしの骨から指4本分ほど上がった、スネの内側にあるツボです。
血行やホルモンバランス、婦人科系の不調などに広く使われるポイントです。
鍼灸院では、主に
・至陰にお灸(もぐさや棒灸)で温熱刺激を与える
・必要に応じて三陰交や、腰・骨盤まわりのツボも併用する
という形で、逆子の改善を目指していきます。
一般的には、妊娠32〜34週くらいまでに鍼灸やお灸を始めると、頭位に戻る可能性が高い
妊娠36週以降になると、赤ちゃんが大きくなり、お腹の中で動けるスペースが少なくなるため、
「戻るための余地」が減っていくと考えられています。
もちろん、36週以降でも、冷えをやわらげる、腰痛や肩こりを軽くする、不安や緊張を和らげる
といった目的で鍼灸を受けることには意味がありますが、
「逆子が戻る可能性を少しでも高めたい」という意味では、少し早めのスタートがおすすめです。
4. 鍼灸で逆子が改善すると考えられるメカニズム
足の小指のツボ「至陰」にお灸を行うと、
胎動(赤ちゃんの動き)が増えたという結果が報告されています。
足先のツボを温めることで、
皮膚 → 神経 → 自律神経 → 子宮や胎児の働き
という流れで刺激が伝わり、
赤ちゃんが元気に動きやすくなるのではないか、と考えられています。
その結果として、
赤ちゃんが自分の力でクルッと頭を下に向けるチャンスが増える
というイメージです。
お灸の「じんわりとした温かさ」は、
・足元やお腹の血流を良くする
・からだ全体をリラックスさせる
・自律神経のバランスを整える
といった働きがあると考えられています。
その結果、
・子宮まわりの血液の流れが整う
・子宮の筋肉の「こわばり」がやわらぐ
・お腹の中の環境が、赤ちゃんにとって動きやすい状態になる
といった変化が起こりやすくなります。
妊娠後期は、
・足先や腰の冷え
・肩こり・背中のこり
・不眠や不安感
など、さまざまな不調が重なりやすい時期でもあります。
鍼灸はこれらの症状にも同時にアプローチできるため、
・冷えがやわらぐ
・体のこりがほぐれる
・よく眠れるようになる
といった変化を通じて、
からだ全体が「逆子が戻りやすいモード」へ近づいていくと考えられています。
5. まとめ
ここまでの内容を、あらためて一言でまとめると、
鍼灸は、「逆子を無理やりひっくり返す」治療ではなく、
赤ちゃんが自分の力で回りやすいように、
お母さんのからだの環境を整えるサポートである
というイメージが近いと思います。
・お腹と下半身を温め、
・血流と筋肉の状態を整え、
・ストレスや不安をやわらげることで、
赤ちゃんが自然に頭位へ向かいやすい条件を増やしてあげましょう。
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