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椎骨動脈および内頸動脈の血流と大脳への流入量に関する頸部痛に対する徒手療法介入

執筆:首都大学東京 人間健康科学研究科(2014年掲載)

背景

頭部や頸部を様々な肢位に固定し行う頸椎への徒手療法は、一時的に脳血流が損なわれる可能性があり血管へのストレスを増大させ、神経血管の有害事象の一因になる可能性が示唆されている。超音波による先行研究で、特定の頸部の位置が頭頸部動脈の血流速度を変化させる可能性を示唆するものがあるが、一定の結果が得られていない。頸部位置が与える血流影響について理解し、より安全な治療法を提供可能と考える。

目的

健常者に対し磁気共鳴血管造影MRAを用いて、徒手療法時、一般的に使用される
頭頸部の位置が与える頭頸部の動脈血流と脳への血液供給について調べる。

方法

対象者:無症状かつ正常な頸椎の関節可動域を有する健常成人20名(平均33歳)。
対象者はスキャナー内でうつ伏せとなり、頭頸部を以下の実験条件に設定した。

1.中間位
2.左回旋位
3.右回旋位
4.牽引を加えた左回旋位
5.牽引を加えた右回旋位
6.C1-C2間に限局した左回旋位
7.C1-C2間に限局した右回旋位
8.中間位での牽引
9.事後テストとして中間位

結果

すべての対象者が正常な血管構造を有しており、個人差があったが、中間位から実験肢位に変化させた時の4動脈の流入量に有意差はなかった。

結論

本研究の結果から徒手療法で一般的に使われる頭頸部の肢位が脳への血流量に対しリスクをもたらすことは示唆されなかった。頚椎に対する徒手療法の安全性、特に上位頸椎の回旋に関する安全性は疑問視されているが、本研究の結果からは頭頸部の肢位自体が血流に及ぼす影響は少ないということが示唆された。

解説

本研究は左右の椎骨動脈および内頸動脈の合計4本の動脈血流と脳への灌流を検討したものである。先行研究では超音波を用いているものが多く1)2)、特定の血管、特に椎骨動脈のみに着目しているものがほとんどである。よって全体的な脳循環に対する検討が行われておらず、本研究のようにMRAにて左右の椎骨動脈と内頸動脈の血流量と脳への灌流量を検討した研究はない。

頸椎の回旋により1つの血管の血流が減少しても他の血管の血流が代償的に増加しており、総合的な脳灌流量はすべての肢位で一定に保たれ、脳灌流にも頸部の肢位による影響はなかったと考えられる。

しかし、本研究では無症状な健常成人を対象としており、実際に頸部に問題を抱える患者においての検討も必要であると考える。また、頭頸部位置を変化させた時の血流についての検討しかされていないため、実際にモビライゼーションやマニュプレーションを実施した際の血流の変化についての検討も期待したい。

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