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朝の顎の疲れは食いしばりかも?原因と鍼灸ケア

朝起きると顎が疲れている、仕事中に無意識に歯を噛みしめている、頭痛や首肩こりがなかなか取れない――このような症状には、食いしばりが関係している可能性があります。

食いしばりは、上下の歯を強く噛み合わせる動作です。睡眠中に起こる場合だけでなく、パソコン作業やスマートフォンの操作、運転、家事などへ集中しているときにも起こります。

食いしばりの原因は、ストレスだけではありません。日中に上下の歯を長時間接触させる癖、睡眠状態、生活習慣、顎関節や咀嚼筋の状態など、複数の要因が関係します。

また、食いしばりによって歯が欠けたり、詰め物が壊れたり、口が開きにくくなったりすることもあります。このような場合は、鍼灸だけで対応せず、歯科・口腔外科で歯や顎関節の状態を確認することが大切です。

 

1.食いしばりとは

食いしばりとは、上下の歯を強く噛み合わせる動作のことです。

専門的には、歯ぎしりなどとあわせて「ブラキシズム」と呼ばれることがあります。ブラキシズムには、睡眠中に起こるものと、日中起きているときに起こるものがあります。

普段は上下の歯が離れているのが自然

口を閉じているときは、上下の歯も常に接触していると思っている方がいるかもしれません。

しかし、身体に力が入っていない安静時は、唇が軽く閉じていても、上下の歯の間にはわずかな隙間があるのが自然です。

食事や会話以外の時間にも歯が接触していると、顎を動かす筋肉が休めなくなります。

特に、弱い力であっても長時間歯を接触させる癖は「歯列接触癖」または「TCH」と呼ばれます。TCHでは強く噛みしめていなくても、顎周辺の筋肉が長く収縮し続けるため、顎の疲労感や筋肉の痛みにつながることがあります。

食いしばりと歯ぎしりの違い

食いしばりと歯ぎしりは、似た意味で使われることがありますが、動き方に違いがあります。

食いしばり・クレンチング

上下の歯を強く噛み合わせるタイプです。

歯を横へ動かす音が少ないため、睡眠中に起こっても本人や家族が気づかない場合があります。

歯ぎしり・グラインディング

上下の歯を強く接触させながら、左右へこすり合わせるタイプです。

睡眠中に「ギリギリ」「ギシギシ」と音がするため、家族から指摘されて気づくことがあります。

睡眠中に起こる食いしばり

睡眠中に起こる食いしばりや歯ぎしりは、「睡眠時ブラキシズム」と呼ばれます。

本人には自覚がないことも多く、次のような症状から気づくことがあります。

  • 朝起きると顎が疲れている
  • 朝にこめかみや頭が痛い
  • 家族から歯ぎしりを指摘された
  • 歯がすり減っている
  • 詰め物や被せ物が繰り返し壊れる
  • 起床時に口を開けにくい

睡眠中の食いしばりを、自分の意識だけで止めることは困難です。

歯や詰め物を保護するため、歯科でナイトガードやマウスピースを作製することがあります。

日中に起こる食いしばり

起きている時間に起こる食いしばりは、「覚醒時ブラキシズム」と呼ばれます。

次のような場面で起こりやすくなります。

  • パソコン作業へ集中している
  • スマートフォンを見ている
  • 自動車を運転している
  • 家事や細かい作業をしている
  • 緊張する仕事や会議に参加している
  • 重い物を持ち上げている
  • スポーツ中に力を入れている

日中の食いしばりは、自分の癖へ気づき、歯を離す習慣をつけることで、接触時間を減らせる可能性があります。

食いしばりと顎関節症は同じではない

食いしばりと顎関節症は、同じものではありません。

食いしばりは、歯を接触させる習慣や筋肉の活動を表す言葉です。

一方、顎関節症は、顎関節や顎を動かす筋肉に次のような症状が起こる病気の総称です。

  • 顎が痛む
  • 口が開けにくい
  • 食事中に顎が疲れる
  • 顎からカクカク音がする
  • 顎を動かしにくい

食いしばりが顎関節や筋肉への負担になる場合はありますが、顎関節症には複数の要因が関係します。また、食いしばりがあっても症状が出ない方もいます。

2.食いしばりで起こりやすい症状

食いしばりの影響は、顎だけに現れるとは限りません。

歯、歯周組織、こめかみ、頭、首、肩などにも負担が広がることがあります。

顎の疲労感・痛み

食いしばりでは、顎を閉じるときに働く筋肉が長時間緊張します。

特に負担がかかりやすいのは、次の筋肉です。

  • 咬筋
  • 側頭筋
  • 内側翼突筋
  • 外側翼突筋

咬筋は奥歯を噛みしめたときに頬の外側で硬くなる筋肉です。

側頭筋は、こめかみから側頭部に広がる筋肉です。

これらの筋肉が疲労すると、次のような症状が起こることがあります。

  • 朝から顎が重い
  • 顎の横側がだるい
  • 物を噛むと疲れる
  • 硬い物を食べると痛む
  • 長く話すと顎がつらい
  • 大きく口を開けにくい

口の開けにくさ

食いしばりによって顎周辺の筋肉が緊張すると、口を開けにくく感じる場合があります。

あくびや食事の際に痛みが出たり、指が縦に2本程度しか入らなかったりする場合は、顎関節症などが関係している可能性があります。

急に口が開かなくなった場合や、顎が外れて口を閉じられない場合は、鍼灸院ではなく歯科口腔外科へ相談してください。

顎から音がする

顎を開け閉めしたときに、次のような音がすることがあります。

  • カクッ
  • コキッ
  • ジャリジャリ
  • ミシミシ

音がするだけで、痛みや開けにくさがない場合は、必ずしも治療が必要とは限りません。

ただし、痛みを伴う場合や、以前より口が開かなくなった場合は、顎関節や関節円板の状態を歯科・口腔外科で確認することが大切です。

頭痛・こめかみの痛み

側頭筋は、こめかみから頭の横に広がっています。

食いしばりで側頭筋が緊張すると、こめかみの重さや締め付けられるような頭痛を感じる場合があります。

次のような特徴がみられることがあります。

  • 朝起きたときから頭が重い
  • 仕事中にこめかみが痛くなる
  • 奥歯を噛むと頭痛が強くなる
  • 顎の疲れと頭痛が同時に起こる
  • 頭を締め付けられるように感じる

ただし、突然の激しい頭痛、手足のしびれ、ろれつの回りにくさ、発熱などを伴う場合は、食いしばりと自己判断せず、医療機関を受診してください。

首こり・肩こり

食いしばるときは顎の筋肉だけでなく、首や肩にも力が入りやすくなります。

特に緊張しやすい筋肉には、次のものがあります。

  • 胸鎖乳突筋
  • 僧帽筋
  • 後頭下筋群
  • 肩甲挙筋

顎の筋肉と首肩の筋肉は、頭部を安定させるために協力して働きます。

そのため、食いしばりと同時に首こり、肩こり、後頭部の張りを感じる方もいます。

エラの張り

咬筋へ繰り返し負荷がかかると、筋肉が発達し、エラの部分が張って見える場合があります。

ただし、顔の輪郭には骨格や皮下脂肪なども関係するため、エラの張りがすべて食いしばりによるものとは限りません。

鍼灸によって骨格そのものを小さくしたり、顔の形を永久的に変えたりすることはできません。

3.食いしばりの主な原因・関連要因

食いしばりには複数の要因が関係します。

「ストレスだけが原因」「噛み合わせだけが原因」と一つに決めつけることはできません。

精神的な緊張・ストレス

不安、緊張、怒り、仕事のプレッシャーなどがあると、無意識に歯を噛みしめることがあります。

仕事へ集中しているときや、困難な作業をしているときに食いしばる方もいます。

ただし、ストレスがある方全員に食いしばりが起こるわけではありません。食いしばりの原因は一つではなく、睡眠や生活習慣なども関係します。日本歯科医師会も、歯ぎしりにはストレス、飲酒、喫煙など複数の要因があると説明しています。

日中の歯列接触癖

仕事中やスマートフォン使用中に、上下の歯が軽く触れたままになっている方がいます。

強く噛んでいる感覚がないため、自分では気づきにくいことが特徴です。

次のような場面で確認してみましょう。

  • パソコンを操作しているとき
  • スマートフォンを見ているとき
  • 自動車を運転しているとき
  • 料理をしているとき
  • テレビを見ているとき
  • 読書をしているとき
  • 緊張する会話をしているとき

上下の歯が触れていたら、一度肩の力を抜き、歯を離します。

睡眠状態

睡眠中の食いしばりや歯ぎしりには、睡眠の質や睡眠中の覚醒反応などが関係する可能性があります。

次のような特徴がある場合は、睡眠時ブラキシズムが疑われます。

  • 家族から歯ぎしりを指摘される
  • 朝に顎が疲れている
  • 起床時に頭痛がある
  • 歯の摩耗がある
  • マウスピースがすぐに削れる

睡眠中の食いしばりは意識して止めることが難しいため、歯科で歯の保護について相談します。

飲酒・喫煙・カフェイン

就寝前の飲酒、喫煙、カフェインの過剰摂取は、睡眠状態やブラキシズムに関連する可能性があります。

特に夕方以降にコーヒー、エナジードリンク、濃いお茶を多く飲む方は、量や時間帯を見直すことも一つの方法です。

ただし、これらを控えれば必ず食いしばりがなくなるわけではありません。

硬い物やガムを長時間噛む習慣

硬い食べ物やガムを長時間噛むと、咀嚼筋や顎関節への負担が増えることがあります。

顎が痛い時期は、次のような食品を控えると負担を減らせる場合があります。

  • 硬いせんべい
  • スルメ
  • フランスパン
  • 硬い肉
  • 長時間噛むガム

顎が楽になったら、状態を確認しながら徐々に通常の食事へ戻します。

頬杖・うつぶせ寝

頬杖やうつぶせ寝では、顎へ外側から力がかかります。

これだけが食いしばりの原因になるとは限りませんが、顎が痛い方では症状を悪化させる可能性があります。

スマートフォンやパソコン作業

画面へ顔を近づけ、頭が前へ出た姿勢になると、首肩に力が入りやすくなります。

作業に集中することで歯も接触しやすくなり、顎・首・肩の筋緊張が同時に起こる場合があります。

食いしばり対策では、顎だけでなく、画面の高さ、休憩時間、首肩の状態も確認します。

 

4.食いしばりに対して鍼灸でできること

食いしばりに対する鍼灸では、歯そのものや噛み合わせを治療するのではなく、食いしばりに伴って緊張した顎・こめかみ・首肩の筋肉や痛みに対して補助的な施術を行います。

鍼灸によって、睡眠中の食いしばりを完全に止めたり、摩耗した歯を元へ戻したりすることはできません。

咬筋の緊張にアプローチする

咬筋は、奥歯を噛みしめたときに頬の外側で硬くなる筋肉です。

食いしばりが続くと、咬筋が硬くなり、次のような症状が起こる場合があります。

  • 頬の張り
  • 顎の疲労感
  • 口の開けにくさ
  • 物を噛んだときの痛み
  • エラ周辺の重さ

鍼灸では、触診や顎の動きを確認し、必要に応じて咬筋へ施術します。

ただし、顎の腫れや歯の感染が疑われる場合は、鍼灸よりも歯科での診察を優先します。

側頭筋の緊張にアプローチする

側頭筋は、こめかみから頭の横に広がる筋肉です。

食いしばりで側頭筋が緊張すると、こめかみの痛みや頭痛につながることがあります。

鍼灸では、顎の疲労と頭痛が同時にある場合などに、側頭筋の硬さや圧痛を確認します。

首・肩・後頭部の緊張に対応する

食いしばりのある方は、顎だけでなく首肩にも力が入っていることがあります。

鍼灸では、必要に応じて次の部位も確認します。

  • 胸鎖乳突筋
  • 僧帽筋
  • 肩甲挙筋
  • 後頭下筋群
  • 首の深部筋
  • 肩甲骨周辺

顎の筋緊張と首肩こり、頭痛が重なっている場合は、顎だけに施術するのではなく、身体全体の状態を見ながら対応します。

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