足三里への鍼灸治療の効果
足三里への鍼灸治療の効果
足三里(あしさんり、ST36)は、脛の外側、膝の少し下にある有名な経穴で、古典から現代に至るまで鍼灸臨床で最も多用されるツボの一つです。効果は伝統的な東洋医学的観点と、現代医学的研究の両方から説明できます。

東洋医学的な効果
東洋医学では、足三里は「脾胃の要穴」とされ、全身の気血を養い、体力を高める重要なツボと考えられています。
- 脾胃を整える:消化不良、胃のもたれ、下痢、便秘、食欲不振などに用いられる。
- 気血を補う:全身の疲労感、倦怠感、虚弱体質の改善。
- 正気を高める:免疫力を強化し、風邪予防や体力増進に。
- 下肢の不調改善:膝痛、下肢のしびれやむくみ、筋肉疲労。
- 精神安定:ストレスや不眠、情緒不安定にも応用。
現代医学的な研究
足三里への鍼灸刺激については多くの研究が行われており、その生理学的な作用も明らかになっています。
- 自律神経系への作用:心拍変動や血圧の安定化に寄与し、ストレス応答を緩和する。
- 消化器機能改善:胃腸運動を調整し、胃酸分泌や胃排出能を改善する作用がある。
- 免疫系の活性化:白血球数の増加、NK細胞活性上昇など免疫機能強化の報告。
- 鎮痛作用:エンドルフィンなどの内因性オピオイド放出を促し、痛みの緩和に働く。
- 抗炎症作用:サイトカイン(炎症性物質)のバランスを整える作用。
臨床でよく使われる症例
足三里は幅広い症状に対して使用されます。特に以下のような疾患や不調で有効とされています。
- 胃炎・胃潰瘍・逆流性食道炎などの胃腸疾患
- 便秘・下痢・過敏性腸症候群
- 全身倦怠・慢性疲労・虚弱体質の改善
- 膝痛・坐骨神経痛・足の疲れ
- 高血圧・動悸・自律神経失調症
- 風邪の予防や免疫力低下の改善
まとめ
足三里は「消化器の要穴」であると同時に、「強壮・免疫調整のツボ」として古来から非常に重視されてきました。現代医学的な研究でも、その効果が科学的に裏付けられています。胃腸の不調、疲労、免疫低下など、心身のバランスを整えたい方におすすめのツボです。