突発性難聴の原因と鍼灸の効果

1. 突発性難聴とは?西洋医学的な定義と限界
突発性難聴は、ある日突然、片方の耳が聞こえなくなる病気です。 「朝起きたら耳が詰まっていた」「電話の音が急に聞こえなくなった」といった症状から始まり、耳鳴りやめまいを伴うことも少なくありません。
医学的には**「原因不明の急性感音難聴」**と定義されており、実は現代医学をもってしても、なぜ発症するのか明確な原因は特定できていないのが現状です。
病院での標準的な治療と「タイムリミット」
耳鼻咽喉科を受診すると、一般的に以下の治療が行われます。
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ステロイド療法(点滴・内服):強力な抗炎症作用で、内耳の腫れや炎症を抑える。
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血管拡張薬・代謝改善薬:血流を良くし、神経の回復を助ける。
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高気圧酸素療法:血液中の酸素濃度を上げ、酸欠状態の内耳に酸素を送る。
これらの治療は発症から**「2週間以内(できれば48時間以内)」**に開始することが推奨されています。これは、内耳の細胞がダメージを受けてから時間が経つと、再生不能になってしまうためです。
治る確率は「3分の1」?西洋医学の限界
残念ながら、標準治療を行っても全ての人が完治するわけではありません。耳鼻科領域ではよく**「3分の1の法則」**と呼ばれ、予後は以下の3つに分かれます。
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完治する(1/3)
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改善するが、難聴や耳鳴りが残る(1/3)
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変化がない(1/3)
特に「原因不明」であるがゆえに、ウイルス説や血流障害説など「推測」に基づいた治療にならざるを得ない点が、西洋医学的アプローチの限界とも言えます。ステロイドが効かない場合、「これ以上の治療法はない」と経過観察になってしまうケースも少なくありません。
2. 東洋医学(鍼灸)から見る「突発性難聴の原因」
病院の検査で「異状なし(原因不明)」と言われても、東洋医学(鍼灸)の視点で体を診ると、**耳が悪くなる「明確な理由」**が見つかることが多々あります。
東洋医学では、耳だけの問題ではなく、**「首・肩のコリ」や「五臓(内臓)の疲れ」**が、結果として耳の機能をダウンさせていると考えます。
① 首・肩の「深層筋」による血流ブロック
最も多い原因が、首や肩の重度な凝りです。 内耳に酸素や栄養を運ぶ血管(椎骨動脈など)は、首の筋肉の間を縫うように走っています。ストレスやデスクワークで首がガチガチに固まると、ホースを踏んで水を止めるように、耳への血流が遮断されてしまうのです。
② 「肝(ストレス)」と「腎(過労・加齢)」の乱れ
東洋医学独特の考え方に、内臓と耳の深い関係があります。
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「肝(かん)」の乱れ(ストレス型) 精神的なストレスや怒りは「肝」を傷つけます。気が高ぶって頭に血が上り(肝火上炎)、耳の血管が痙攣して難聴を引き起こすパターンです。
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「腎(じん)」の衰え(過労・加齢型) 「腎」は生命エネルギーの貯蔵庫であり、耳と深くつながっています(腎は耳に開竅する)。過労や睡眠不足、加齢で腎のエネルギーが枯渇すると、聴力を維持できなくなります。
3. なぜ鍼灸で聴力が回復するのか?(エビデンスとメカニズム)
「ステロイドで治らなかった耳が、なぜ鍼(はり)で変わるのか?」 その理由は、薬とは全く異なるルートで**「内耳の血流」と「神経の興奮」にアプローチできるから**です。
メカニズム①:内耳血流の強制的な改善
鍼を打つと、軸索反射(じくさくはんしゃ)という反応が起き、その周辺の血管が拡張します。 特に首や耳周りのツボ(完骨、翳風など)を刺激することで、薬では届きにくい内耳への動脈の血流量をピンポイントで増やすことができます。 酸素と栄養が届けば、仮死状態だった聴覚細胞(有毛細胞)が再び働き出す可能性があります。
メカニズム②:自律神経のリセット(星状神経節ブロック様作用)
突発性難聴の患者様の多くは、強いストレスで交感神経が過緊張(戦闘モード)になっています。これにより血管が収縮し続けています。 首への適切な鍼治療は、交感神経の緊張を緩め、**「星状神経節ブロック(SGB)」**という医学的処置に近い効果をもたらすことが分かっています。自律神経が整うことで、本来の自然治癒力が発揮されやすい環境を作ります。
【データ】標準治療+鍼灸の併用効果
実際に、鍼灸治療の効果を示すデータも報告されています。
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改善率78%の報告:ある臨床研究では、突発性難聴患者に対して鍼治療を行った結果、78%に有効な反応が見られました。
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難治性(ステロイド無効)例への希望:標準治療で改善しなかった患者様に対しても、鍼治療で約47%に改善が見られたという報告があり、「最後の砦」としての有効性が示唆されています。
重要なのは、**「病院の治療と鍼灸は併用できる」**ということです。むしろ、ステロイドで炎症を抑えながら、鍼灸で血流を送るという「併用」こそが、回復の可能性を最大化する選択肢と言えます。
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